第1245話 安易な制度改正
去年11月、政府税調において、「財産評価を巡る諸問題」と称して税務当局の資料が議論されました。近年問題になる事例として、1棟の賃貸マンションの購入事例と賃貸用不動産の小口化商品が取り上げられています。両者ともに、取引される時価相場と、相続税や贈与税の計算で適用される財産評価額に大きな差が生じることから、多額の節税につながっていると指摘されています。
時価との乖離という問題の根本的な原因は、賃貸不動産を売却する相場としての時価は、賃借人が多ければ多いほど高くなる反面、相続税などの財産評価ではその逆に低くなることにあります。賃借人が多いと、その分賃借料が多く入ってくるため、当然に売却する場合の価値は高くなります。一方、相続税などの計算においては、物件を利用する価値に着目するので、賃借人がいれば、物件を建て替える際には立退料を支払う必要があるなど、その分利用が制限されるので、賃借人が多ければ多いほど評価額は減るようになっています。結果、相続税の節税対策に賃貸不動産を建築することは王道とされてきました。
令和8年度改正による取り扱いは、相続開始5年内に購入した不動産や賃貸不動産の小口化商品については、通達に基づく評価額ではなく、購入額を基準に一定の調整を行った金額などの所定の方法で評価するというものです。評価方法の改正であるのならば、相続開始時の時価とは言えない「購入額」を基準としたり、5年内の購入などの限定された不動産のみを対象としたりするのには疑問があります。なぜなら、このような評価は、現状の評価を是正するものではなく、ただ単に安易な節税を防止するためのものだからです。
今回の改正が、安易な節税を防止するためのものであるならば、「評価額が著しく不適当」となる場合には、税務当局のさじ加減で自由に評価できる総則6項があるわけですから、こんな改正を行う必要などないはずです。
現状の相続税の財産評価方法の根本が妥当ではないからこそ、このような問題が起きているのであり、時代に適合した相続税の評価方法を作ることが税務当局の役目のはずです。安易な制度改正に走らず、抜本的な見直しを今こそ行うべきです。
文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所
所長 栁沼 隆
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